11 19, 2013

Brain Floss NOW!

Room #2

Editorial Note

Brain Flossはファット乗りのバイブルか?

by 稲葉直幸

写真:Alfredo Martinez/Red Bull Content Pool

スパチュラの生産は3年間でおよそ1,000台。けっして大きなセールスを記録したわけではありませんが、多くのメーカーはスパチュラをヒントに様々な派生シェイプを生み出しました。その潮流は今でも続いており、リバースサイドカットやリバースキャンバーのスキーテクノロジーは10年前よりはるかに親しいものになりました。

裏を返せば、スパチュラが世に出た当時、伝統に囚われたメーカーはもちろん大半のスキーヤーにとっても、スパチュラのシェイプは理解不能でした。誰の目にもスパチュラは異型であり、ステンレススチールの反射面には偏見や誤解に満ちた視線が注がれました。

事実、当時の自分はキャンバーがしっかりついた初代K2セス・ピストルの走破力に惚れ込んでおり、スパチュラの実物を目の前にしても半信半疑、正直に言えば嘲りの感情すらありました。自分のような頭の硬い人間のために、このユーザーガイドは作られたともいえます。

スキーに限らず、新しい技術を身に付けるには、それまでの既成概念をいったん疑うことから始まります。革命的とも呼ばれたスパチュラですが、その乗り方はそれまでの技術を根本から否定したり、一から技術を作り変えるものではありません。本文でシェーンが言うとおり、すでに身につけた技術を少し変えるだけで良いのです。

とはいえ、実際にスパチュラに乗ってみなければ、既成の技術を疑いつつシェーンの言葉を理解することは難しいものがあります。身体性よりも理性を重視する人間であるほど、スパチュラの乗り方には抵抗感が大きくなります。だからシェーンは脳みそをリフレッシュするくらい柔軟に考えてほしいという意味から、「Brain Floss」と名付けたのです。(Dental Floss=歯間ブラシをもじって、Brain Flossは脳みそのシワのブラッシングを意味する言葉遊び)

「Brain Floss」で語られるシェーンの予言の正しさは、その後の歴史が証明しています。「Brain Floss」の価値は先見性だけにあるのではありません。シェーンのように伝統や既成事実を疑いつつ、物事をスライドするように斜めから見て自分の頭で考えることの大切さ、そこに「Brain Floss」の真の価値はあるのではないかと思います。聖書や予言の書のように洗脳(Brain Wash)による思考停止ではなく、創造力を刺激するからこそ、スパチュラを超える独自のパウダースキーがたくさん生まれたのではないでしょうか。

「Brain Floss」はシェーン・マッコンキー基金理事シェリー・マッコンキーさんのご協力によって掲載が実現しました。ウェブサイトでは、シェーンのイラストが入ったTシャツやキャップなどの販売、寄付の受付けも行っています。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
WHITE ROOMのテキストは クリエイティブ・コモンズ 表示 2.1 日本 ライセンスの下に提供されています。

 

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Author: Naoyuki Inaba
URL: http://skibum.jp/whiteroom/articles/editorial-note-02
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